このブログでも何度も取り上げたことがありますが、国は「在宅介護」を推進しています。
今年の厚生労働白書でも「自身や家族が介護を必要とする時に受けたい介護の希望を調査したアンケートによれば、自宅での介護を希望する人は70%を超えている。(「介護保険制度に関する国民の皆さまからのご意見募集」)(厚生労働省「平成27年版厚生労働白書」より)」として、多くの国民の希望により「在宅介護」を推進しているかのように書かれています。
ただ、色々な調査を私が見た限り、国民の希望は必ずしも「在宅介護」ではないような気もしています。
ということで、今日は、いくつかの調査結果を見ながら、国民の希望は「在宅介護」なのか、「施設介護」なのかを考えてみたいと思います。
まず、今年の「厚生労働白書」に出ていた「介護保険制度に関する国民の皆さまからのご意見募集」から…
この調査は、平成22年5月15日に厚生労働省老健局から公表されたもので、「介護の希望」について次の様な結果が出ています。
(表をクリックすると拡大します。)

自分が介護が必要になった場合、何らかの形で自宅で介護を受けたいと希望している人(ブルーの部分)が74%、両親が介護が必要になった場合、何らかの形で自宅で介護を受けさせたいと希望している人が80%となっています。
大多数の人が「在宅介護」を希望しています。
ところが、別の調査で少し質問を変えたところ、いささか違う結果が出ています。
前にこのブログで紹介した、内閣府の「『認知症に関する世論調査』の概要」が それ…
この調査では、「認知症になった場合の暮らし」という項目で「もし、あなたが認知症になったとしたら、どのように暮らしたいと思いますか。」という質問をしています。
その結果が下の表です。
(表をクリックすると拡大します。)

何らかの形で自宅で介護を受けたいと希望している人(ブルーの部分)が48.3%、施設での介護を希望している人(ピンクの部分)が47.7%となり、「在宅介護」希望と「施設介護」希望が拮抗してきます。
「介護の条件を認知症に限定したのだから、結果が変わって当然!」と言われてしまえば それまでですが、「では、認知症になった場合の施設整備ってどうなっているのでしょうか?」と尋ねたくなります。
もう一つ別の調査結果を紹介しましょう。
これも前にこのブログで紹介した、秋田県の「在宅における医療・介護に関する県民意識調査について」です。
この調査では、「認知症について」という項目で「認知症発症時の介護場所の希望」を本人が認知症を発症した時と、家族が認知症を発症した時について尋ねています。
その結果が下の表です。
(表をクリックすると拡大します。)

何らかの形で自宅で介護を受けたいと希望している人(ブルーの部分)が、本人の場合が23.6%、家族の場合が21.4%、施設での介護を希望している人(ピンクの部分)が、本人の場合が58.1%、家族の場合が62.4%となり、「施設介護」希望が「在宅介護」希望を大幅に上回ります。
「秋田県特有の事情が あるんだろう…」
と言われるかもしれませんね。
では…
実は、昨日紹介した、オリックス・リビングの「介護に関する意識調査」でも似た質問をしています。
質問の内容は…
「あなたが、今後認知症を発症し、大切な方を忘れてしまった場合、その方に介護してほしいですか。もしくは施設に入りたいですか。」
そして結果は…
「介護してほしい」 |
23.2% |
「施設に入る」 |
71.1% |
「その他」 |
5.7% |
秋田県の調査より、「施設介護」を希望する人が増えていますね。
さて、国民の希望は「在宅介護」、それとも「施設介護」、どちらなんでしょうね。
過去の記事より
秋田県:在宅における医療・介護に関する県民意識調査

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