軽度要介護者の介護保険の保険給付の縮小
昨日(7月20日)、厚生労働省の第60回社会保障審議会介護保険部会で軽度要介護者の介護保険の保険給付の見直しに関する議論が行われました。
ニュースサイト等では、次のように伝えています。
介護のニュースサイト Joint
軽度者への給付の縮小、「やむを得ない」との声も
具体策をめぐる調整本格化へ
この件に関しては、このブログでも過去に何度か取り上げています。
見直しが行われそうな項目として、軽度要介護者に対する「訪問介護見直し」と「福祉用具の貸与・住宅改修等の自己負担」があります。
とりあえず、今日は軽度要介護者に対する「訪問介護見直し」について見ていきたいと思います。
社会保障審議会介護保険部会で配布された資料の中に、訪問介護の受給者に関する資料が出ていましたので、ご覧いただきたいと思います。
(図をクリックすると拡大します。)
![]() |
(厚生労働省:第60回社会保障審議会介護保険部会「参考資料1」より) |
なぜか?
その理由は、生活援助サービスがどのようなサービスかが分かれば、自ずと答えは出てきます。
介護保険法施行規則第五条では、生活援助サービスを次のように規定しています。
法第八条第二項 の厚生労働省令で定める日常生活上の世話は、入浴、排せつ、食事等の介護、調理、洗濯、掃除等の家事(居宅要介護者(同項 に規定する居宅要介護者をいう。以下同じ。)が単身の世帯に属するため又はその同居している家族等の障害、疾病等のため、これらの者が自ら行うことが困難な家事であって、居宅要介護者の日常生活上必要なものとする。第十七条の二及び第十七条の五において同じ。)、生活等に関する相談及び助言その他の居宅要介護者に必要な日常生活上の世話とする。
赤字の部分が、生活援助サービスに関して規定している部分です。
生活援助サービスを受けられる要介護者は、単身の世帯又は同居している家族等が障害、疾病等のため、これらの者が自ら行うことが困難な人に限定しています。
決して、誰でも受けられるサービスではないのです。
つまり、生活援助サービスを利用している割合が、要介護1や2の軽度要介護者ほど高く、要介護3以上の重度要介護者に少ない理由は、軽度要介護者には単身者等が多く、重度要介護者には少ないということなのです。
単身の重度要介護者の場合、大部分は特別養護老人ホームなどを利用しているのでしょう。
したがって、生活援助サービスを利用している軽度要介護者にとって このサービスは、生きていく上で必要不可欠なサービスといえます。
では、生活援助サービスが介護保険の保険給付の対象から外された場合、どのようなことが考えられるか…
金銭的に余裕のある人は、保険外のサービスを利用するのでしょうが、余裕の無い人は、特別養護老人ホームなどを利用するか、現在同居していない家族が身の回りの世話をすることになると思われます。
しかし、特別養護老人ホームは昨年4月から、軽度要介護者は利用できなくなったのでは?
たしかに、昨年4月から、特別養護老人ホームは原則として要介護3以上の人しか利用できなくなりました。
(リーフレットの画像をクリックすると拡大します。)
ただ、上のリーフレットに、「要介護 1 や要介護 2 の方であっても、やむを得ない事情により、特別養護老人ホーム以外での生活が困難な方については、特例的に入所できます。」とあります。
生活援助サービスを受けられない人は、「特別養護老人ホーム以外での生活が困難な方」に該当する可能性が高く、特別養護老人ホームに特例的に入所出来る可能性はあると思われます。
しかし、これは今まで在宅介護を推進してきた厚生労働省の方針に明らかに反するものです。
では、特別養護老人ホームに入所せず、現在同居していない家族が身の回りの世話をする場合はどうでしょうか?
この場合、身の回りの世話をすることになる家族の負担が増えるため、現在の仕事を辞めざるを得ない状況になることも考えられます。
つまり、介護離職をするということです。
しかし、現政権は一億総活躍社会を実現するために、「介護離職ゼロ」を目標にしています。
もし、生活援助サービスを介護保険の保険給付の対象から外すのであれば、この目標は断念せざるを得ません。
結局、生活援助サービスを介護保険の保険給付の対象から外すということは、これまでの政策の方針転換であり、目標とした政策を断念したということなんでしょうね。
明日は、軽度要介護者に対する「福祉用具の貸与・住宅改修等の自己負担」についてみていきたいと思います。
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